表面科学、真空科学、電子放出現象を中心に、ナノ・原子スケールの構造と機能に関する研究を進めています。ここでは、本研究室で取り組んでいる主な研究テーマを紹介します。
1. 高輝度・低発散な電界放出電子源の開発
電子顕微鏡や各種電子ビーム応用では、明るく、安定で、広がりの小さい電子源が重要です。本研究室では、金属探針先端の形状や表面状態を制御することにより、高輝度かつ低発散な電界放出電子源の実現を目指しています。
特に、ナノメートルスケールの先端構造が電子放出特性に与える影響に注目し、実験と解析の両面から評価を行っています。探針先端の形状制御、放出パターンの観察、電流特性の測定を通じて、より高性能な電子源の設計指針を明らかにすることを目指しています。
2. 表面反応とナノ構造形成のその場観察
材料表面では、ガス吸着、拡散、反応、蒸発など、多様な現象が起こります。本研究室では、酸素や水などのガス雰囲気中で生じる表面反応に着目し、探針表面の変化やナノ構造形成の過程を調べています。
特に、電界下で進行する表面反応やエッチング現象、ナノ突起形成のメカニズムに関心を持ち、観察結果と実験条件の関係を整理しながら、現象の理解を進めています。表面構造の変化が電子放出特性や材料機能にどのように影響するかを明らかにすることも重要なテーマです。
3. 電界イオン顕微鏡・アトムプローブによる原子レベル解析
原子レベルで材料表面や探針先端を観察・分析することは、ナノ構造と機能の関係を理解する上で重要です。本研究室では、電界イオン顕微鏡やアトムプローブ関連技術を活用し、先端構造や表面状態を高い空間分解能で評価しています。
これにより、先端原子配列の観察、表面反応後の構造変化の把握、ナノ構造形成の実態解明などを行っています。表面・界面の微視的構造を捉えることで、電子放出や表面反応の理解をより深めることを目指しています。
4. スピン偏極電子源と新機能電子源の探索
電子の持つスピン自由度を活用できる電子源は、新しい計測・分析技術への応用が期待されます。本研究室では、磁性材料や特徴的な表面構造を利用したスピン偏極電子放出の可能性を探っています。
また、従来型の電子源とは異なる機能をもつ新規電子源の設計にも関心を持ち、材料、表面構造、放出特性の関係を調べています。基礎物理に立脚しながら、新しい電子源機能の実現に向けた研究を進めています。
5. 実験装置・計測システムの開発
本研究室では、研究対象そのものだけでなく、それを調べるための装置や計測システムの開発にも力を入れています。真空装置の改良、高電圧計測系の構築、信号処理回路の設計、検出器の利用、制御プログラムや解析環境の整備など、研究を支える基盤技術も重要な研究対象です。
装置を理解し、必要に応じて改良しながら使うことは、研究の自由度を高め、独自性のある成果につながります。研究室では、現象理解と装置開発の両面から研究を進めることを大切にしています。
研究の特徴
当研究室の研究は、単に既存の手法で測るだけではなく、現象を深く理解するために、装置、計測、解析を一体として考える点に特徴があります。物理や材料に興味のある学生はもちろん、装置づくり、計測、プログラミングに関心のある学生にとっても、幅広く学べる環境です。